運送業許可の種類
運送業には扱う貨物や車両の種類、運送形態によって必要な許可は異なります。主として以下の3種類があります。
一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)
トラック、主として中型以上を使用して、他人の貨物を有償で運ぶ事業です。国土交通省(地方運輸局)の許可が必要になり、営業所・車庫・運行管理体制などで要件が定められています。
車両の台数、営業所の数、運行管理者・整備管理者の配置、資金計画など、厳しい許可要件が課されます。事業規模が大きく、かつ継続的な事業運営が求められます。
特定貨物自動車運送事業
特定の荷主の貨物だけを運送する事業です。特定の1社と専属契約を結び、有償で貨物を運ぶ事業のことです。一般貨物自動車運送事業に比べて要件は緩和されますが、それでも一定の許可要件を満たす必要があります。
貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)
350kg以下の貨物を積載可能な軽自動車軽トラックを使って、他人の貨物を有償で運ぶ事業です。届出制であり、比較的簡易な手続きで開業できます。ほかの貨物自動車運送事業とは異なり、「許可」ではなく「届出」で開始できる点が大きな特徴です。近年、EC市場の拡大に伴い、需要が急増しています。

軽貨物運送業とは黒ナンバー?
「黒ナンバー」とは、軽貨物運送業に使用する車両に交付される事業用軽自動車ナンバープレート(黒地に白文字)のことです。
この黒ナンバーを取得することで、他人の貨物を運んで報酬を得ることが法的に可能になります。自家用で使っている白ナンバーの軽自動車で貨物を運送して、報酬を受け取るのは違法(白ナンバー営業)となります。
自家用車に装着される黄色や白色のナンバープレートとは異なり、事業用車両であることを示すために、黒地に黄色の文字(軽自動車の場合)、または緑地に白色の文字(普通自動車の場合)が使われます。軽貨物運送業の場合、軽自動車を使用することが多いため、「黒ナンバー」がその代名詞となっています。
この黒ナンバーを取得することで、法的に貨物運送事業を行うことが認められ、運送の対価として報酬を受け取ることができます。

軽貨物運送業許可の取得要件と手続き
軽貨物運送業は届出制です。運輸支局に対して「貨物軽自動車運送事業経営届出書」を提出することで事業を開始できます。
主要な要件と手続きの例は次のとおりです。
必要な書類(一例)
貨物軽自動車運送事業経営届出書
使用車両の車検証の写し
事業用自動車等連絡書(黒ナンバー取得用)
自動車損害賠償責任保険および任意保険の加入証明書
住民票や運転免許証の写し(本人確認用)
手続きの流れ
1.使用する軽トラックの準備(名義変更・保険加入等)
2.運輸支局に届出書を提出
3.「事業用自動車等連絡書」を受け取る
4.陸運局または軽自動車検査協会で黒ナンバー交付
5.営業開始
地域によっては事前相談が必要な運輸支局もあります。
軽貨物運送業許可が不要なケース
原則として、他人の貨物を有償で運送する場合は、軽貨物運送業の届出(黒ナンバーの取得)が必要です。
- 次のようなケースでは、「軽貨物運送業」の届出は不要です。
- 自社の荷物を自社の車で運ぶ(自家用運送)場合
- 無償で友人や知人の荷物を運ぶ場合
友人や知人などと共同で物品を購入し、その運搬を分担する場合。これも事業としての運送には該当しません。また、ボランティア活動などで、無償で貨物を運送する場合。対価が発生しないため、事業にはあたりません。
報酬を得る目的で他人の荷物を継続的に運ぶ場合は、必ず届出が必要です。届け出がないと、違法営業とみなされた場合は、行政処分・罰則の対象となります。
個人事業主の場合の注意点
軽貨物運送業は個人事業主として開業しやすい業種ですが、次のような注意点があります。
開業届の提出
税務署に対して「個人事業の開業届出書」を提出し、屋号を登録します。
青色申告の準備
節税になもなるので「青色申告承認申請書」を同時に提出しておいたほうがよいでしょう。
帳簿の管理と確定申告
ガソリン代、高速代、整備費用なども経費計上できますが、帳簿管理が必要です。
安全管理者講習について
軽貨物運送業は、安全管理者講習の義務はありません。一般貨物運送業では必要です。
ただし、運転者として交通事故やトラブルのリスクを軽減するため、任意で運行管理や安全運転講習の受講してもよいでしょう。