経営業務の管理責任者(経管)は、建設業の経営全般を適切に管理し執行する能力を持つ者とされており、その要件や常勤性の証明は許可申請では厳しく審査されます。経管の役割、要件、そして常勤性の証明方法について詳しく解説します。
建設業許可とは
建設業許可とは、一定の規模以上の建設工事を請け負う場合に、国または都道府県から受けなければならない許可制度のことです。建設業法に基づき、元請・下請にかかわらず、1件の工事代金が500万円(税込)以上、(建築一式工事の場合は1500万円以上、または延べ面積150平方メートル以上の木造住宅)となる場合に許可が必要となります。

経営業務の管理責任者(経管)とは
経営業務の管理責任者とは、会社の経営を実質的に行った経験を有する人物であり、建設業の健全な経営を継続的に行うために不可欠な存在と位置づけられています。
建設事業全体の適正な運営を管理し監督する責任者となります。建設業の許可要件の一つであり、許可申請では、この経管が適切に配置されていることが厳しく審査されます。
建設業法第7条第1号では、経営業務の管理責任者がいることが許可要件の一つとされており、この者がいなければ、建設業許可を取得することはできません。
経管は、単に役職名があればよいというものではなく、実際に建設業の経営業務について一定の経験と知識を有していることが求められます。資金調達、契約締結、労務管理、技術者の配置などの建設業の経営に不可欠な業務を総合的に管理する能力が必要とされています。
なお、経管は役職名ではなく、あくまで要件としての地位です。たとえば、取締役であっても要件を満たしていなければ経管にはなれません。
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
<経管の要件とは>
経営業務の管理責任者となるには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
(主な経管の要件)
・法人の役員等としての経験
建設業を営む法人の役員などとして、5年以上の経営業務経験がある者。法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者)または個人事業主、支配人。
・建設業の事業主または支配人としての経験
個人事業主や支配人等として、5年以上の経営業務経験がある者。
・建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
・建設業に関して、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等、または役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
・その他、国土交通大臣が認める者
これらのどのケースでも、実績を登記簿、契約書、請求書などで証明する必要があります。

経管の常勤性の証明について
建設業許可において、経営業務の管理責任者は常勤でなければなりません。これは、経管が実際に経営判断を担う立場にあることを意味しており、他社の経管や役員を兼務している場合などは、常勤性が疑われる可能性があります。
常勤性の判断基準
社会保険の加入状況
健康保険や厚生年金への加入があり、勤務実態があること。最も一般的な常勤性の証明となります。申請する会社の社会保険に加入していることが確認できる書類(健康保険証の写しなど)を提出します。
ただし、社会保険の加入が義務付けられていない規模の個人事業主や法人の場合、他の方法で常勤性を証明する必要があります。
給与の支払い実績
役員報酬や給与の支払いがあることが望ましい。
住民票、納税証明書等
申請する会社の所在地から物理的に通勤可能な場所に居住していることを確認します。
勤務実態の確認資料
出勤簿、業務日報、通勤定期券のコピーなど。
事業所への交通経路、交通費の支払い状況
事業所への通勤時間や交通手段に合理性があるかを確認します。会社から交通費が支給されている場合、その履歴も常勤性を裏付ける証拠となります。
兼職状況の確認
他社での経管・役員・個人事業等との兼務があると常勤性が認められない場合があります。別法人での登記がある場合は注意が必要になります。
実務上の注意点
建設業許可の更新時や変更届提出時では、常勤性を改めて確認されることがあります。同一人物が複数法人の経管を兼ねている場合などです。