「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」という二つの区分がありますので、わかりやすく詳細に解説します。
一般貨物自動車運送事業
一般貨物自動車運送事業とは、不特定多数の荷主から貨物の運送を依頼されて、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業となります。
根拠法令
この事業は、貨物自動車運送事業法に基づいています。同法第2条第2項において、「一般貨物自動車運送事業」が定義されています。
事業の特性
荷主の特定性
不特定多数の荷主から依頼を受け、多様な貨物を運送します。貨物の内容は問われず、多様な荷主に対応できます。
許可の要件
事業の公共性・安全性の確保のためとなっており、厳しい許可要件が課されています。国土交通大臣、または地方運輸局長の「許可」が必要です(道路運送法第3条)。
営業所
事業運営の拠点となる営業所が必要です。適切な立地条件が求められます。
休憩・仮眠施設の設置
ドライバーの労働環境を確保するため、適切な休憩・仮眠施設が必要です。
車両の確保
事業規模に応じた適切な台数の事業用自動車(トラック)が必要です。車両は原則として自己所有が求められますが、リース契約等も一定の要件下で認められます。
車庫の確保
営業所に併設または近接する場所に、事業用自動車の全てを収容できる広さの車庫が必要です。
資金計画の適切性
事業開始に必要な資金に加えて、少なくとも6ヶ月間の運転資金を確保できることなどが求められます。予期せぬ事態や事業の立ち上がり期の資金繰りを考慮したものです。
運行管理者・整備管理者の選任
運送の安全を確保するために運行管理者資格者証を有する者、および整備管理者を選任することが義務付けられています。
損害賠償能力
万一の事故に備え、十分な損害賠償能力(自動車保険への加入等)が求められます。
許可基準の詳細
国土交通省の「一般貨物自動車運送事業の許可申請の手引き」や各地方運輸局のウェブサイトに詳細な許可基準が示されています。
例えば、車両については、地域によっては異なる場合がありますが、最低車両台数が5台以上とされていることが一般的です。
また、車庫については、都市計画法等の関係法令に適合していること、前面道路の幅員が車両の通行に適していることなども審査されます。
国土交通省の通達等
国土交通省からは、「一般貨物自動車運送事業の許可申請に関する処理方針について」といった通達が出されており、許可申請の審査基準や留意事項が示されています。これらの通達は、許可申請を行う上で重要な指針となります。

特定貨物自動車運送事業について
特定貨物自動車運送事業は、特定の荷主(特定の者)の貨物のみを運送する事業のことでます。
一般貨物自動車運送事業とは異なって、不特定多数の荷主の貨物を運送することはできません。
根拠法令
この事業も、貨物自動車運送事業法に基づいています。同法第2条第3項において、「特定貨物自動車運送事業」が定義されています。
事業の特性
荷主の特定性
原則として、特定の1社の荷主の貨物のみを運送します。例えば、自社で製造した商品を運送するために子会社を設立して、その子会社が親会社の貨物のみを運送する場合などが典型的な例となります。
事業の専門性
特定の荷主のニーズに特化した運送サービスを提供します。
許可の要件
一般貨物自動車運送事業と比較して、以下の点で要件が緩和されていますが、それでも一定の基準が求められます。
営業所・休憩仮眠施設の設置
一般貨物と同様に必要ですが、事業規模に応じた柔軟な対応が認められる場合があります。
車両の確保
特定の荷主の運送量に応じた適切な台数が必要です。
車庫の確保
特定の荷主の貨物量に応じた規模の車庫が必要です。
資金計画の適切性
一般貨物ほど厳格ではありませんが、事業を継続するために必要な資金計画が求められます。
運行管理者・整備管理者の選任
運送の安全を確保するため、運行管理者、整備管理者を選任することが義務付けられています。
国土交通省の通達等
特定貨物自動車運送事業についても、国土交通省から「特定貨物自動車運送事業の許可申請に関する処理方針について」といった通達が出されており、許可申請の審査基準が示されています。
運送業許可の取得の手続き
一般貨物自動車運送事業も特定貨物自動車運送事業も、その取得手続きには、専門的な知識と多くの時間が必要です。
一般的な流れを示しますが、個別の状況によって変わってきます。
事前準備
事業計画の策定
どのような貨物を、どこからどこへ、どのような車両で運送するのか、具体的な事業計画をつくります。
要件の確認
営業所、休憩・仮眠施設、車庫、車両、資金、運行管理者、整備管理者などの許可要件を満たせるか、現状を把握して、不足している部分を洗い出します。
関係法令・通達の確認
貨物自動車運送事業法、各種省令、国土交通省の通達などを確認して最新の情報を把握します。各地方運輸局のホームページも活用します。
申請書類の作成
申請書を定められた様式に従い、申請書を作成します。
添付書類は次の書類など、多数の添付書類が必要です。
事業計画書、営業所、休憩・仮眠施設、車庫の案内図、平面図、登記事項証明書または賃貸借契約書の写し、車両に関する書類(車検証の写し、取得予定の車両の見積書等)、資金計画書、残高証明書等、運行管理者資格者証の写し、運行管理者選任届、整備管理者選任届、定款、登記事項証明書(法人の場合)、役員に関する書類(履歴書等)、損害賠償能力に関する書類(保険証券の写し等)、その他、審査に必要な書類
地方運輸局への申請
作成した申請書類一式を、事業を行う営業所を管轄する地方運輸局に提出して申請手数料を納付します。
審査
提出された書類が法令や通達の要件を満たしているか、地方運輸局によって審査が行われます。必要に応じて、追加書類の提出や、現地調査が行われることもあります。
許可書の交付
審査の結果、要件を満たしていると判断されれば、許可書が交付されます。
事業開始前の手続き
許可書の交付後、事業用自動車の登録、運行管理者・整備管理者の選任届出、運賃料金設定届出など、事業開始前に必要な手続きを行います。
事業開始
以上の手続きが完了次第、運送事業を開始することができます。