一般貨物自動車運送事業について、許可要件や手続きを詳しく解説します。
一般貨物自動車運送事業とは
一般貨物自動車運送事業とは他人の依頼を受け、有償で貨物を自動車により運送する事業です。依頼に基づいて、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業のことです。宅配便、引越し、企業間の貨物輸送など、トラックを用いて荷物を運ぶすべての事業がこれに該当します。
貨物自動車運送事業法に基づいて、国土交通大臣の許可を受けなければ行うことができません。無許可で事業を行った場合、罰則の対象となります。

一般貨物自動車運送事業許可とは
一般貨物自動車運送事業許可とは、一般貨物自動車運送事業を行うために国土交通大臣から与えられる許可のことです。この許可によって、適法に運送事業を営むことができます。
一般貨物自動車運送事業を営むには、国土交通大臣(実務的には地方運輸局長)の「許可」が必要です(貨物自動車運送事業法第3条)。
運送事業が国民生活や経済活動で重要な社会インフラであるために、安全性、信頼性、適正な競争環境を確保する必要がためです。許可を得るには、要件を満たして、審査に通らなければなりません。
許可を取得するためには、事業計画を提出して一定の要件(人的・物的・資金的・法令遵守等)を満たす必要があります。
許可要件・許可基準
一般貨物自動車運送事業の許可を受けるには、次の要件や基準をすべて満たす必要があります。これらの基準は、輸送の安全確保、健全な事業運営、利用者の保護を目的としています。
営業所の設置
適切な場所の確保
営業所は、都市計画法等の法令に違反しない場所に設置する必要があります。市街化調整区域や住居専用地域など、建築物や施設の用途が制限されている区域では、営業所の設置が認められない場合があります。
適切な規模の確保
事業規模に応じた広さが必要であり、従業員の休憩スペースや事務スペースが確保されていなければなりません。

車庫の設置
適切な場所の確保
営業所に併設するか、営業所から概ね10km以内の場所に設置する必要があります。車両の出入りに支障がなく、道路交通法に違反しない場所である必要があります。
適切な規模の確保
事業用自動車のすべてを収容できる広さが必要で、他の車両の運行を妨げない間隔(隣接車両との間に概ね1m以上の間隔)を確保できる必要があります。
都市計画法等への適合
営業所と同じく、都市計画法等の法令に違反しない場所である必要があります。
前面道路の幅員
車両制限令に適合する幅員を有する道路に接していることが必要です。事業用自動車が安全に通行できる幅員が求められます。
休憩・睡眠施設の設置
運転者が有効に利用することができる適切な施設を、営業所または車庫に併設することが必要です。広さ、清潔さ、快適性なども必要になります。
事業用自動車の確保
最低車両台数
原則、5台以上の事業用自動車(軽トラックや二輪車は含まれません)を確保する必要があります。安定した輸送サービスを提供するための最低限の規模として定められています。
使用権原の証明
自己所有であるか、またはリース契約などによって使用権原が明確であることが必要です。ローン購入も認められます。
自動車の検査・整備
継続的な点検・整備が可能な状態であることが求められます。
運行管理者・整備管理者の選任
運行管理者
事業用自動車の運行を管理する責任者です。営業所の規模に応じて必要な人数を選任し、運行管理資格者証を保有している必要があります。
整備管理者
事業用自動車の整備・点検を管理する責任者です。整備管理者資格者証を保有しているか、または一定の実務経験を有している必要があります。
資金計画
所要資金の算出
事業用自動車の取得費用、車庫・営業所の賃料、人件費、燃料費、保険料など、事業開始に必要な資金を正確に算出します。
資金の調達方法
自己資金、金融機関からの融資など、調達方法が明確であり、かつ確実に調達できる見込みがあることが必要です。
資金の十分性
算出された所要資金のすべてを賄えるだけの自己資金または調達可能資金を有していることが求められます。
損害賠償能力
事故に備えて十分な損害賠償能力を有していることが必要になります。自賠責保険に加え、対人・対物無制限の任意保険への加入が必要です。
法令遵守体制
貨物自動車運送事業法等の理解
事業を営む上で関係する法令(貨物自動車運送事業法、労働基準法、道路運送車両法、道路交通法など)を遵守する体制が構築されていること。
教育体制
運転者や運行管理者など、従業員に対する安全教育や法令遵守教育が定期的に実施される体制が整備されていること。
過去の違反歴
申請者やその役員が、過去に運送事業に関する法令に違反し、一定期間を経過していない場合、許可が下りないことがあります。
許可手続き
事前準備
許可要件を満たしているかを確認します。
申請書類の作成
多くの申請書類を作成する必要があります。事業計画書、資金計画書、営業所・車庫の図面、車両の登録書類、運行管理者・整備管理者の資格証明書、損害賠償能力を証する書類などがあります。
申請書の提出
作成した申請書類一式を、管轄の運輸支局(地方運輸局)に提出して申請手数料を納付します。
書類審査・現地調査
提出された書類は、運輸支局で厳格な審査が行われます。必要に応じて、営業所や車庫の現地調査が行われて申請内容と実際の状況が一致しているか確認されます。
許可基準への適合性審査
提出書類や現地調査の結果に基づいて、上記の許可要件・許可基準をすべて満たしているかどうかの適合性審査が行われます。
許可書の交付
審査がおわり、許可要件をすべて満たしていると判断されれば許可書が交付されます。
登録免許税の納付
許可書交付後、登録免許税を納付して事業を開始できます。