一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業などの運送事業を営むには、国土交通大臣または地方運輸局長の許可が必要です。この許可が取り消された場合は、事業者にとって深刻な影響を及ぼします。
なぜ許可が取り消されるのか、どのような処分があり、過去にはどのような事例があったのかを詳しく解説します。
取り消し処分理由
運送事業の許可取り消し処分になる主な理由は、貨物自動車運送事業法や関係法令の違反、そして、それに伴う事業の適格性の欠如です。
貨物自動車運送事業法からの引用です。
(許可の取消し等)
第三十三条 国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は第三条の許可を取り消すことができる。
なお、関東運輸局の下記リンクのサイトでは、一般貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の状況が確認できます。また、自動車総合安全情報(国土交通省物流・自動車局のホームページ)において、自動車運送事業者の行政処分情報を公表しています。

法令違反による重大な事故
過労運転や過積載の常態化、飲酒運転の黙認など、事業者が安全管理を怠った結果、重大な交通事故を発生させた場合です。悪質な法令違反の事故は、許可取り消しになる可能性が高くなります。
悪質・重大な法令違反行為
- 悪質な法令違反とはこのような違反です。
- 過積載の常態化など違反を繰り返したり、組織的に過積載を指示・容認していた場合
- 点呼・運行記録等の偽装など、安全運行のために必須の点呼や運行記録の作成を怠り、虚偽の記録を作成していた場合
- 許可なく他者に事業者の名義を使わせる名義貸し行為
- 営業所の新設や事業計画の変更を無許可で行うなど、不正な手段で事業を拡大した場合
許可基準
許可を受けた後でも事業の継続に必要な財産的基礎や運転資金が著しく欠乏し、安全な運行維持が困難になった場合も違反となります。また、運行管理者や整備管理者などの資格者のが配置されなくなった場合なども該当します。
運行管理者は、道路運送法などに基づき営業所ごとに配置が義務付けられており、乗務員の管理(点呼、健康状態の把握、指導監督)、運行計画の作成、休憩施設の管理などの業務を行います。運行管理者は資格者証が必要です。
不正な許可取得
許可申請書に虚偽の記載をして不正に許可を取得していたことが判明した場合。

取り消し処分内容
運送事業者が法令違反を犯した場合、違反の程度に応じて段階的な行政処分が課されます。許可取り消しは、行政処分の中で最も重い処分です。
警告→輸送施設の使用停止→事業停止(輸送停止)
→事業改善命令で安全管理体制の強化や運行管理方法の是正などが命じられます。命令に従わない場合は、さらに重い処分となります。
運送事業許可取り消し
運送事業の許可が失効して、旅客や貨物の運送事業ができなくなります。事業者は直ちに運送業務を停止しなければならず、事実上の倒産に追い込まれる可能性が高くなります。
運送事業の許可が取り消された場合、再申請には原則として5年間の欠格期間があり、その期間経過後に、問題の完全な解消と再発防止策の徹底を証明する必要があります。
違反点数制度
道路運送法や貨物自動車運送事業法に違反した行為に対して点数が加算されて、その累積点数に応じて処分を決定する仕組みがあります。ひとつの違反が軽微であっても、何度も繰り返せば累積点数が増えて、事業停止や許可取消などの重い処分につながります。
取り消し事例
過労運転による重大事故
長時間の運転や不適切な運行ダイヤの設定を常態化させた結果。運転者が居眠り運転等で重大な人身事故を引き起こした場合などです。会社が運転者の労働実態を把握せずに安全管理の義務を著しく怠っていたと判断されると取り消し処分となります。
組織的な過積載の常態化
会社が積極的に過積載を指示や黙認して、行政指導や処分にもかかわらず改善が見られなかった場合です。過積載は道路の損傷だけでなく、制動距離の延長による重大事故の原因となります。
不正な運行管理
運行管理者による点呼が実施されていない、運行記録がないとか改ざんされているなどの不正が組織的に行われ、安全管理体制ができていなと認められた場合。
日本郵便の事例
日本郵便は運送事業者ではありませんが、2024年に日本郵便株式会社が、貨物自動車運送事業法に違反したとして、地方運輸局から行政処分を受けた事例です。
一部の郵便事業において、貨物自動車運送事業許可を得るべきところを、取得せずに運送事業を営んでいたことが判明しました。問題となった運送業務について、事業停止命令が課されることになった。
日本郵便は郵便法に基づく特殊な事業者ですが、郵便業務以外の一般の貨物運送を行う際は、他社と同様に貨物自動車運送事業法の適用を受けます。
対策
許可取り消しという最悪の事態を避けるためには、日頃からの法令順守体制の徹底と、行政処分に対する適切な対応が必要です。
点呼の確実な実施、全乗務員に対して正確な対面点呼を徹底し、記録を厳正に管理します。労働時間や健康管理、過労運転を防ぐために乗務員の労働時間や休憩・睡眠時間の管理を徹底します。
全従業員(経営層含む)に対して、定期的な教育・研修など、法令順守や安全運行に関する教育を定期的に実施します。
また、内部監査も重要です。運行管理や整備状況について、定期的にチェックし、違反の芽を早期に対策をします。


